前回は民法の根幹の第3条の権利能力を解説してくれたよね。
今回は意思能力についての第3条の2を解説するよ^^
前回は権利能力の発生時期,例外等について解説しました.
今回は似たような名前の能力である,意思能力についての条文を解説したいと思います.
間違い等ありましたら、ご指摘していただけるとありがたいです^^
1. 民法第3条の2条文
民法第3条の2(意思能力)
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
2. 条文解説
「意思能力」とは、一定の法律効果の発生を意図しているとみられる意思の表示(意思表示)などの法律上の判断において自己の行為の結果を判断することができる能力(精神状態・精神能力)のことです。
逆に意思表示がない状態とは、幼年の子ども、高度の精神病、泥酔なんかがその例です。
すなわち、「法律行為のときに幼年の子ども、高度の精神病、泥酔等であった者であるときは、その法律行為は無効になります」という意味です。
3. 判例
この条文は2020年の民法大改正の時に付け加えられた条文です。元になった判例は下のものです。
後見開始の審判を受ける前の法律行為については、制限行為能力を理由として当該法律行為を取り消すことはできないが、その者が当該法律行為の時に意思能力を有しないときは、意思能力の不存在を立証して当該法律行為の無効を主張することができる(大判明38.5.11)
後見開始の審判(成年被後見人になるための条件)を受けなければ、制限行為能力を理由として法律行為(契約等)の「取消し」はできないですが、幼年の子ども、高度の精神病、泥酔等であった者のときは、意思能力がなかったことを証明すれば法律行為を「無効」とできますという内容です。
昭和のバブル期にお酒を呑ませて判断能力をなくさせて儲からないマンションなどを買わせる手口が横行したという話を聞いたことがありますが、既に明治時代に判決が出ていたのですねΣ(・ω・ノ)ノ!
4. まとめ
意思能力を有しなかったときは今回示したように、「取消うる」のではなく、「無効」となります。すなわち最初から何もしていないのと同じ状態になるということですね。行政書士試験や宅建試験を受験する方は十分に気をつけてくださいね。
今回はここらへんで。
5. 追記
「民事訴訟の観点から意思能力の主張立証方法を知りたい」とのリクエストがありましたので、追記したいと思います。
まず、立証責任は意思無能力を主張する側にあるとのことです。
次に、裁判例であったのは
医学的な評価、行為者の年齢、行為の前後の言動や状況、行為の動機・理由、行為に至る経緯、行為の内容・難易度、行為の効果の軽重、行為の意味についての理解の程度、行為時の状況等がに検討され,判断材料として考慮されている。
とのことでした。*1
実際には、立証は難しいみたいで、「問題が発覚した時点で成年後見を申立てておくのが有益」としている法律事務所さんもあるようです。*2
<参考>
*1. https://www.haralawoffice.com/archives/1038
*2. https://www.ikizakashita.jp/blog/index.php/archives/844/
注)リンク先の方へ。
もしご迷惑でしたらご連絡をいただければ文章共に削除させていただきます。
ゆうき
理系博士号取得者 / 製薬会社勤務→商社勤務(2021年)/ 所有物件 戸建4軒
科学、不動産投資、法律と気が向いたことを書いていく雑記ブログです。
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2020年11月23日ブログ開始
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